木製の小屋作りにおいて「水切り金物」なんてよく考えず、しっかり検討しない方が多いと思います。
木製小屋の腐朽において、実はとても重要な役割を果たしている「水切り金物」は、木造建物の材料の中でも金属製で特殊です。
「水切り金物」の適切な使用によって、木製小屋の耐久年数に大きく差が出ることも予測されます。
知られざる「水切り金物」について紹介します。
雨水が滞留するところに注意

日の当たり方によって日陰になりやすい箇所は、雨が止んだ後もなかなか乾燥しません。
雨が止んでも最後まで雨水が残りやすい屋根軒先や外壁面下部は、長時間にわたって雨水が滞留し腐朽が進みやすくなってしまいます。
最初に腐朽するのは
15年以上にわたり展示品として、いくつかの場所でたくさんのPANELHOUSEを管理してきましたが、木部が腐りやすいのは壁面下部と屋根の軒先部分です。
経験的には屋根軒先が最も早く傷んだ印象があります。
その原因として共通するのが、壁面下部も軒先も雨水が最後まで残りやすい場所なのです。
「最後まで濡れてる」⇒「水が常にあり腐朽促進」
このような方程式が考えられます。
水切り金物とは?
材料の中でも金属製であり地味な存在の金物(役物)の水切りは、どんな形状のモノを水切り金物と言われているのでしょうか?
小さな木製小屋で使われる代表的な二つの水切り金物を紹介します。
屋根軒先で使われる捨て唐草

画像のような形状の金物は「捨て唐草」と呼ばれていて、屋根軒先の角の部分にのせるようにしてとめます。
雨水が逆流しないように折り曲げられた「返し」が付いています。
水切り金物を注文するときに「捨唐草」 や「軒先金物の唐草タイプ」で建材業界には通じると思います。
建築資材には古くからの名残りで使われる用語が多く、捨て唐草と呼ばれるのは瓦屋根の軒先部分に唐草模様があしらわれてたとか諸説あるようで、水切り金物が唐草模様と関係がないようです。
土台水切り

住宅建材業界では「水切り金物」というと、軒先金物よりもこの土台水切りの方を指しているかもしれません。
住宅でも壁面下部に必ず使われる部材で基礎の上を見ると、鋼製がガルバリウム鋼板の土台水切りが取り付けられてます。
基礎内への雨水の侵入を防ぎ、土台材の水濡れ腐朽を防止するのが目的の部材です。
水切り金物は必要か?

住宅では、屋根軒先、庇や壁面下部に金属の水切りが取り付けられてます。
雨水が流れ落ちていく過程で必ず通る場所です。
皆さんがあまり気にしない地味な水切り金物は、小屋を作るときにも必要なのでしょうか?
金属製なのは腐朽を防ぐため

水切りに使う素材が木材ではなくトタン等の金属なのは、滞留した雨水が木材にしみこんで腐りやすくすることを防止するためです。
他の場所と比べて雨上がり後も長時間濡れた状態が続きやすいことから、木製を避けていて腐朽がすすみやすい場所であることを証明しています。
外壁面が北側や日陰になる場所の下部は、常に湿っていてカビや苔が生えやすく特に警戒が必要です。
外壁下部は濡れやすくて乾きにくい
PANELHOUSEキットでは、外壁下部の水切りを採用してませんでしたが、これまでで腐朽の問題は、ほとんどありませんでした。
よろい張り外壁材に、住宅建材としてはあまり使われないカラマツを採用したことが原因かもしれません。
展示品を解体するときにわかるのですが、最下段の外壁材は他のものと比べて確かに劣化しています。
外壁材最下部に雨水が滞留したのは間違いないですが、腐朽に強いカラマツのおかげで金属製の水切りが無くても大きな問題にならなかったのかもしれません。
雨どいは付けたい

雨どいを付けると軒先から壁面に雨水がつたったり、地面に落ちた水滴が壁面下部に撥ね返ったりするのを防止できます。
木造を「濡れにくくする」ための合理的な住宅設備です。
雨どいは木製小屋を腐りにくくする設備として秀逸で、長期で考えたらコストパフォーマンスが良いので、できれば雨どいを付けたいですね。
屋根こう配が緩いと軒先注意

緩やかな屋根こう配だと雨水が流れて落ちにくく、急こう配ならすぐに流れて水はけがよくなります。
軒先の雨水滞留は屋根こう配に影響を受けるので、傾斜が緩やかでなだらかな屋根こう配の木製小屋を設計するときは、軒先の雨水滞留に気を配りましょう。
PANELHOUSEは三寸こう配(約17度傾斜)で緩やかな勾配に属しますが、やはり、軒先の水はけが良いとは言えませんでした。
防水シートを二重に
日射を直接受けたり雨水が滞留したり、積雪地では雪庇ができたりと、屋根の軒先は過酷な環境です。
展示してから7~8年間経過して解体した展示品小屋では、アスファルトシングル下地の防水シートの劣化も確認しました。
軒先部分は屋根材下地までもが傷みやすいので、下地の防水シートを二重にしたり、軒先の水切り金物と一体化させて滞留する雨水対策をするのが良いでしょう。
結論、軒先水切りはあった方が良い

屋根軒先も外壁面下部も雨水が滞留しやすいことは確かで、小さな小屋であっても水切り金物を取り付けた方が良いでしょう。
PANELHOUSEのように外壁面下部は省略するとしても、軒先の水切り金物だけは取り付けるべきです。
水切り金物は大型のホームセンターで販売しており、ネット販売でも手に入ります。
屋根こう配が緩いと水切り金物だけでは…
一般的に三寸こう配(約17度傾斜)以下は緩こう配とされてます。
緩い屋根こう配なら水切り金物だけでは安心できず、屋根材や下地材を重ねたり防水テープ(ブチルテープ)で目止めやコーキングするなど、屋根軒先を総合的に水切り対策する必要があります。
雨水が滞留した部分に腐朽菌やカビが繁殖し、軒先であってもその後はシロアリやキクイムシ等の食害に遭遇する可能性が高まります。
もし、これらに気づかずに軒先から腐朽が広まると、屋根全体から雨漏りのリスクも高まります。
セルフビルドで小屋を作る前に、屋根こう配と水切りが重要なことを考えてみましょう。
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