木造の建築現場で見かける、壁に張るシートは何のためなのでしょうか?
建築現場で「タイベック」と書かれたシートをよく目にするからなのか、小屋を建てる方は、このシートを張りたがります。
「タイベック」はデュポン社の透湿防水シートです。
このシートの役割はいったい何でしょうか?
結露を防ぐため
結露は壁の中でカビを発生させたり、木造の腐朽を早めたりする原因で対策が必要です。
高温多湿な室内空気が壁内に入ってきても、湿気をうまく屋外に排出する仕組みが必要です。
建物の水蒸気のコントロールが結露対策のすべてと言ってもよいのです。
壁材は水蒸気をよく通す?
壁の材料に使う構造用合板や石膏ボードは、水蒸気をよく通します。
材料の透湿抵抗値からみてもほとんどの建築材料は水蒸気を通し、コンクリートや発泡系の断熱材も同じです。
石膏ボードにおいては、抵抗値が0.5(㎡・h・mmhg/g)と透湿シートの0.4とほぼ変わりません。
材料の見た目の誤解ですが、水蒸気は材料内を自在に通過できるのです。
気密と通気を3つの層で
水蒸気の移動を制御するには「壁内に入れない(気密)」「壁内から出す(通気)」の仕組みが必要です。
気密防湿層

室内の水蒸気を壁内に入れないようにする層で、主に防湿気密シートを使います。
電気配線などで防湿気密シートをカットしなければならない箇所がありますが、気密テープで補修します。
外気との温度差が大きい地域では特に注意が必要な層です。
防風透湿層
気密防湿しても壁内に入ってしまった水蒸気を、屋外に排出する役目の層です。
それと雨水で断熱材が濡れないようにする目的もあります。
透湿防水シートとも呼び、皆さんが見かけるタイベックは、これにあたります。
通気層

通気層はいわゆる隙間で、透湿層から流れてきた水蒸気を屋外に排出する働きがあります。
通気層は胴縁でつくられ、厚さは15mmや18mmが一般的です。
防湿気密・透湿防水シートの使い方

上記の3つの層で結露対策しています。
- 水蒸気を室内にとどめるようにする気密防湿層
- 壁内に入ってしまった水蒸気を排出する防風透湿層
- 出てきた水蒸気を運びだす通気層
防風透水層だけで結露対策は不十分

建築材料は水蒸気を通すので、実際のところ気密防湿層だのみです。
つまり、防風透湿層のタイベックシートを張るだけでは、あまり結露対策の効果がありません。
気密防湿層をしっかり張って、水蒸気を壁内に入れないことが重要なのです。
丁寧なシート施工がとても大切
配線や配管、コンセント設置などでシートを切断したら気密テープで隙間なく仕上げる施工が重要です。
シートのわずかな隙間でも、せっかくの気密防湿層がほとんど機能しなくなります。
継ぎ目は150mm以上重ね合わせるようにします。
まとめ
大工さんや建築従事者でも、厚い合板やコンクリートが水蒸気を通すことをよく知らず、誤解している人も多くいます。
断熱のことを考える時に避けては通れない結露問題は、3つの層の働きの理解が重要です。
水蒸気を通さないシートと通すシートは、真逆の働きをします。
それぞれのシートの働きを理解して、丁寧なシート施工が良い結露対策となります。
コメント